次の役割に必要な水準を見ながら、自分の強みを成果へつなげる
ブログ記事のポイント
- 役割が変われば求められる力も変わるため、次の役割を目指す段階では弱みにも向き合う必要があります
- 弱みを克服するための役割は、本人の目標や必要な経験を確認しながら決めることが大切です
- 弱みばかりを意識すると、本人の強みや、これまで出してきた成果が見えにくくなることがあります
- すべての弱みを高い水準まで引き上げるのではなく、役割に必要な水準まで近づけるという考え方もあります
- マネージャーには、弱みへの努力と強みの活用を一緒に考える視点が求められます
こんにちは。
キャリアコンサルタントのみってるです。
今日は、
「弱みは、すべて克服しなければならないのか」
というテーマで考えてみます。
昨日は、
「若手の育成は、強みを伸ばすことから始める」
という話を書きました。
若手の時期には、自分がすでに持っている強みを仕事で使い、小さな成果を経験してもらう。
その成果が生まれた理由を一緒に振り返り、自分の力に気づいてもらう。
そうして得た手応えが、自信や次の挑戦につながります。
では、係長や課長など、次の役割が見えてきた段階でも、強みだけを伸ばせばよいのでしょうか。
私は、次の役割を目指す段階では、強みを生かすことに加えて、弱みにも向き合う必要があると考えています。
ただし、すべての弱みを完全になくす必要があるとは思っていません。
役割が変われば、求められる力も変わる
現在の仕事で成果を出している人が、次の役割でも同じように活躍できるとは限りません。
役割が変われば、求められる力も変わるからです。
自分の担当する仕事で成果を出す。
お客様と良い関係をつくる。
必要な知識を身につける。
計画を立て、確実に実行する。
こうした力を使って、個人として高い成果を出してきた人もいるでしょう。
しかし、係長や課長などの役割では、自分の仕事だけを見ているわけにはいきません。
周囲へ働きかける。
後輩や部下を支援する。
必要な情報をチームで共有する。
意見の違う人とも話し合う。
チーム全体の状況を見ながら判断する。
自分一人で成果を出す力に加えて、周囲の力を引き出し、チームとして成果を出す力が必要になります。
本人にとって苦手なことでも、次の役割を担ううえで欠かせない力であれば、そのままにしておくことはできません。
強みだけではなく、弱みにも目を向ける必要があります。
弱みを克服する経験を、日常業務の中につくる
私はマネージャーとして、部下が次の役割を目指すとき、その人の弱みを補うための役割を担ってもらうことがありました。
例えば、自分の仕事はきちんと進められるものの、周囲へ働きかけることが苦手な部下がいたとします。
その場合には、チーム内の取りまとめ役や、メンバーへ働きかける役割を任せます。
会議で意見をまとめる。
活動の進み具合を確認する。
必要な情報をメンバーへ共有する。
困っている人がいれば声をかける。
チームで決めたことを、実行へ移すように働きかける。
こうした役割を経験することで、これまであまり使ってこなかった力を身につけてもらおうと考えていました。
弱みは、本人へ指摘するだけでは変わりません。
実際の仕事の中で、その力を使う経験が必要です。
うまくできなかったときには、何が難しかったのかを振り返る。
できたことがあれば、どのような行動が良かったのかを確認する。
経験と振り返りを重ねることで、少しずつ力が身についていきます。
役割は一方的に与えるものではない
ただし、
「ここが弱いから、この役割をやってください」
と一方的に決めればよいわけではありません。
まず、本人が将来どのような役割を目指しているのかを確認します。
次の役割に進みたいと考えているのか。
現在の仕事で専門性を高めたいのか。
周囲を支援する仕事へ関心があるのか。
本人が目指す方向によって、必要な経験は変わります。
そのうえで、
「次の役割では、どのような力が求められると思いますか」
「今の自分に、どのような経験が必要だと思いますか」
「この役割を経験することが、今後どのように役立つでしょうか」
と話し合います。
マネージャーが考えている育成の意図も伝えます。
本人が役割の意味を理解できれば、単に仕事を増やされたのではなく、自分の成長につながる経験として受け止めやすくなります。
実際に、チーム内で役割を担い、周囲へ働きかけて成果を上げた経験を昇進試験で説明し、次の役割へ進んだ部下もいました。
弱みを把握し、必要な経験を積んでもらうことは、次の役割を目指す人にとって大切な育成です。
弱みばかりを語ると、本人の強みが見えなくなる
一方で、マネージャーを10年以上経験した頃から、私は少し違うことも考えるようになりました。
きっかけは、ある部下の昇進試験でした。
その部下は、自分の弱みを理解していました。
そして、その弱みを克服するために努力していました。
自分に足りない力を自覚し、必要な役割を経験しながら改善しようとする姿勢は、大切なことです。
ところが、昇進試験では弱みを意識するあまり、
自分には何が足りないのか。
その弱みを、どのように克服しようとしているのか。
どのような努力を続けているのか。
という説明が中心になってしまいました。
その結果、その人が本来持っていた強みや、その強みを使ってどのような成果を出してきたのかが、十分に伝わりませんでした。
弱みに向き合っていることは伝わります。
しかし、
「この人がマネージャーになれば、どのようなチームをつくるのか」
「この人の強みが、チームの成果へどのようにつながるのか」
という姿が見えにくくなってしまったのです。
弱みへの意識が強くなりすぎると、その人らしさまで弱みの陰に隠れてしまうことがあります。
弱みを完全になくす必要はない
この経験をきっかけに、私は弱みの捉え方を変えました。
次の役割を担ううえで大きな支障になる弱みであれば、改善する必要があります。
仕事の基本が身についていない。
周囲へ大きな影響を与える行動がある。
必要な報告や相談ができない。
人の意見を聞かず、一人で判断してしまう。
その状態のままでは、本人だけでなく、部下やチームへ影響が広がる可能性があります。
一方で、弱い部分が次の役割に求められる平均的な水準へ近づいているのであれば、さらに多くの時間を使って、得意な人と同じ水準まで高める必要があるでしょうか。
私は、必ずしもそうではないと考えるようになりました。
弱みを放置しているわけではない。
自分の課題として理解している。
その弱みを克服するために、どのような役割を担ってきたのか。
どのような努力を続けているのか。
今後、どのように向き合っていくのか。
それを本人が説明できればよいと思います。
弱みをゼロにすることではなく、役割を果たせる水準まで近づけ、必要な努力を続ける。
そのような考え方があってもよいのではないでしょうか。
強みを使って、どのようなチームをつくるのか
弱みに向き合うことを説明したうえで、本人には自分の強みを語ってほしいと思います。
自分は、人の話を丁寧に聞くことができる。
現場の情報を細かく集め、整理できる。
決めたことを粘り強く実行できる。
周囲へ自然に声をかけ、協力を得ることができる。
新しい方法を考え、まず試してみることができる。
その強みを使って、どのようなチームをつくりたいのか。
チームの成果へ、どのようにつなげたいのか。
部下や後輩の成長へ、どのように生かしたいのか。
そこまで考えることで、その人らしいマネジメントの姿が見えてきます。
すべてのマネージャーが、同じ強みを持つ必要はありません。
人の話を聞く力を生かすマネージャーもいます。
行動力を生かしてチームを前へ進めるマネージャーもいます。
情報を集め、状況を丁寧に分析するマネージャーもいます。
大切なのは、弱みをなくして同じようなマネージャーになることではありません。
必要な力を身につけながら、自分の強みをチームの成果へつなげることです。
一人ですべてをできることがマネジメントではない
マネージャーになったからといって、すべての仕事を一人で高い水準までできる必要はありません。
自分が苦手なことについて、得意なメンバーの意見を聞くこともできます。
自分にはない視点を持つ人に、考えを聞くこともできます。
必要な力を持つメンバーへ役割を任せ、その人が力を発揮できるように支援することもできます。
それは、自分の弱みを隠すことでも、誰かへ仕事を押しつけることでもありません。
自分だけで答えを出そうとせず、メンバーが持っている力を引き出す。
必要な知恵を集め、チームで考える。
それぞれの力を生かしながら、チームとして成果を出す。
それも、マネジメントに必要な力だと思います。
自分一人ですべてをできるようになることだけが、マネージャーとしての成長ではありません。
自分の強みと弱みを理解し、周囲の力も生かせるようになることが、次の成長につながります。
本人と一緒に、弱みとの向き合い方を考える
マネージャーが個人を見るということは、強みと弱みを点数で比べることではないと思います。
強みが何点で、弱みが何点なのか。
社内の平均と、どのくらい差があるのか。
それだけを見ても、本人に必要な育成は分かりません。
本人は、今後どのような役割を目指しているのか。
その役割には、どのような力が必要なのか。
現在の弱みは、役割を果たすうえでどの程度影響するのか。
どのような経験を積めば、その弱みに向き合えるのか。
どこまで弱みを改善し、どの強みをさらに生かしていくのか。
こうしたことを本人と一緒に考えることが大切です。
キャリアコンサルタントとして人の成長を考えるときにも、弱みをなくすことだけがキャリア形成ではないと感じています。
自分に足りない力を理解する。
必要な努力を続ける。
同時に、自分がすでに持っている力にも気づく。
その強みを、今後の仕事や役割でどのように生かすかを考える。
強みと弱みの両方を理解することが、本人らしいキャリアをつくることにつながるのだと思います。
まとめ
若手の時期には、自分の強みを使って小さな成果を生み出し、自信をつけてもらうことが大切です。
一方、係長や課長など、次の役割を目指す段階では、その役割に必要な力を確認し、弱みにも向き合う必要があります。
周囲へ働きかけることが苦手であれば、チーム内の取りまとめ役を経験してもらう。
後輩への支援が苦手であれば、相談を受ける役割を担ってもらう。
実際の仕事の中で経験を積み、振り返りながら力を身につけていきます。
ただし、すべての弱みを完全になくす必要はありません。
次の役割を担ううえで必要な水準へ近づいている。
弱みを放置せず、必要な努力を続けている。
そのことを自分の言葉で説明できる。
そこまで来ているのであれば、さらに弱みばかりを見続けるのではなく、本人の強みにも目を向けたいと思います。
その強みを使って、どのようなチームをつくるのか。
チームの成果へ、どのようにつなげるのか。
本人らしいマネジメントの姿を考えることが大切です。
弱みの克服に力を使いすぎて、自分の強みを見失う必要はありません。
マネージャーに求められるのは、部下の弱みをすべてなくすことではなく、本人が目指す役割に合わせて、弱みへの向き合い方と強みの生かし方を一緒に考えることではないでしょうか。
皆さんは、部下の弱みを克服させることへ意識が向きすぎて、その人の強みや、これまで出してきた成果を見えにくくしていないでしょうか。
一度、部下一人ひとりの強みと弱みの捉え方を振り返ってみてはいかがでしょうか。
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