ブログ記事のポイント
- 経験によって答えが早く見えることは、マネージャーの強みです
- 成果を急ぐ場面では、マネージャーが判断する必要もあります
- 質問をしていても、自分の答えへ部下を導いている場合があります
- 誘導が続くと、部下は自分で考えるより上司の正解を探すようになります
- マネージャーの成長とは、経験を手放すことではなく、経験の使い方を変えることです
経験が増えるほど、答えは早く見える
マネージャーは経験を積むほど、部下から報告を受けた段階で、その後の流れを予測できるようになります。
このまま進めると、どこで問題が起きそうか。
お客様は、どのように反応するか。
次に何を確認し、どのように動けばよいか。
似たような場面を経験しているからこそ、部下がすべてを説明する前に、必要な対応が見えてくることがあります。
これは、マネージャーの大切な強みです。
問題が起きたときには、影響が広がる前に対応しなければなりません。
お客様や関係者へ影響する場面では、着地点を考え、必要な行動を早く決めることも必要です。
経験があるからこそ、問題が大きくなる前に気づくことができます。
部下が見落としていることを補い、チームを守ることもできます。
そのため、経験を使って答えを出すこと自体が悪いわけではありません。
ただし、その経験を部下育成でどのように使うかについては、一度立ち止まって考える必要があります。
質問しているから、部下の話を聞いているとは限らない
私は以前、部下へ、
「君は、どう思う?」
「どのように進めようと考えていますか?」
と質問していました。
質問をしていたので、自分では部下の考えを聞いているつもりでした。
しかし、私の心の中には、すでに自分なりの答えがありました。
部下の答えが自分の考えに近ければ、そのまま話を進めます。
ところが、自分とは違う答えが出てくると、質問の仕方を変えながら、自分が考えていた答えへ近づけようとすることがありました。
私は、そのことに気づかないまま、
「部下の意見を聞いている」
と考えていたのだと思います。
質問の形を使っていても、実際には答えが決まっている。
相手の考えを理解するためではなく、自分の考えを確認するために質問している。
そのような状態になっていました。
皆さんにも、似た経験はないでしょうか。
部下へ質問したものの、期待していた答えと違ったため、言葉を変えてもう一度質問する。
それでも違う答えが返ってくると、さらに質問を重ねる。
最後に部下が自分の考えに近いことを言うと、
「そう、それが言いたかった」
と話を終える。
部下は自分で答えを見つけたように見えます。
しかし、実際には上司が考えていた答えへ導かれているだけかもしれません。
自分の答えへ導くことにも理由があった
当時の私は、自分の答えへ導くことが、部下のためになると考えていました。
失敗する可能性を減らせる。
仕事を早く進められる。
部下も成果を出しやすくなる。
特に経験のあるマネージャーであれば、自分の方法を伝えた方が、早く成果へつながる場合があります。
目標を達成する必要があります。
お客様へ迷惑をかけられない場面もあります。
部下が失敗して、自信を失わないようにしたいという気持ちもあります。
そのため、当時の判断がすべて間違っていたとは思いません。
マネージャーには成果を出す責任があり、必要な場面では方向を示すことも大切です。
ただ、成果を出すために必要な関わりと、部下を育てるために必要な関わりが、いつも同じとは限りません。
早く答えを出すことが必要な場面もあります。
一方で、少し時間をかけてでも、部下自身に考えてもらった方がよい場面もあります。
経験のあるマネージャーほど、この二つを意識して分ける必要があるのだと思います。
誘導され続けると、部下は上司の正解を探し始める
質問をしながら、自分の答えへ導くことが続くと、部下はどのようになるでしょうか。
最初は、自分なりの考えを伝えていた部下も、上司が納得していない様子を見ているうちに、
「この答えではないのだろう」
と考えるようになります。
そして次第に、
「自分は、どう考えるか」
ではなく、
「上司は、どの答えを求めているのか」
を考えるようになります。
上司の正解を当てることが、会話の目的になってしまいます。
これでは、自分で考える力を育てることは難しくなります。
また、マネージャーにとっても、見逃しているものがあります。
現場にいる部下だからこそ、気づいている情報があるかもしれません。
お客様の小さな反応や、周囲の変化を捉えている可能性もあります。
自分がこれまで考えなかった方法を、部下が考えていることもあります。
しかし、自分の答えへ導くことを優先すると、その情報や方法を聞き逃してしまいます。
経験は、物事を早く判断するために役立ちます。
同時に、
「これまで、この方法でうまくいった」
という思い込みを生むこともあります。
自分の経験に頼るほど、自分とは違う考えを受け止めにくくなることがあるのです。
答えだけでなく、そこへ至った考え方を聞く
経験を重ねる中で、私は、部下が出した答えだけでなく、そこへ至った考え方を聞くようになりました。
なぜ、その方法を選んだのか。
どのような情報から、そのように考えたのか。
どのような結果を想定しているのか。
答えだけを見ると、自分の方法とは違っていても、考えた理由を聞くと納得できることがあります。
現場で得た情報をもとに、部下なりに考えていることもあります。
話を聞き、考え方に大きな違和感がなく、問題が起きたときの影響も管理できるのであれば、部下が考えた方法を試してもらいます。
必要であれば、チームのミーティングで意見を出し合い、方法を考えることもできます。
もちろん、すべてを部下へ任せればよいわけではありません。
緊急性の高い問題では、マネージャーが早く判断しなければなりません。
育成を理由に、必要な対応を遅らせてはいけません。
その場合でも、マネージャーが考えている着地点を示したうえで、部下がどのように考えているのかを聞くことはできます。
成果を上げるか、部下を育てるか。
どちらか一つを選ぶのではありません。
問題を解決しながら、部下の考え方を知る。
必要な支援をしながら、本人が考える機会も残す。
そのような関わり方もできると思います。
マネージャーの成長は、経験の使い方を変えること
マネージャーの成長とは、これまで積み重ねてきた経験を手放すことではありません。
自分の経験には意味がないと考えることでもありません。
大切なのは、その経験を何のために使うのかです。
答えをすぐに伝えるためだけに使うのか。
部下の考えに不足している部分を探すために使うのか。
それとも、部下の考えを理解し、どのような支援が必要かを判断するために使うのか。
同じ経験でも、使い方によって部下との関わりは変わります。
経験があるからこそ、早く答えを示せる。
同時に、経験があるからこそ、問題が起きたときの影響を考えながら、部下の方法を試してもらうこともできます。
部下の考えを聞くことは、マネージャーが責任を手放すことではありません。
部下の意見をすべて受け入れることでもありません。
相手が何を考えているのかを理解したうえで、マネージャーとして必要な判断をすることです。
自分の答えを持っているからこそ、それをすぐに伝える前に、
「この人は、どのように考えたのだろう」
と、一度立ち止まることができるのではないでしょうか。
まずは、自分の質問を振り返ってみる
部下へ質問するとき、皆さんは何を聞こうとしているでしょうか。
相手の考えを理解しようとしているでしょうか。
それとも、自分が考えている答えを、相手にも言ってもらおうとしているでしょうか。
質問の言葉だけを見ても、その違いは分かりにくいものです。
どちらも、
「君は、どう思う?」
という言葉になることがあります。
違いは、その後の自分の反応に表れます。
自分と違う答えが返ってきたとき、すぐに質問を変えていないでしょうか。
答えを修正する前に、
「なぜ、そのように考えたのですか?」
と聞けているでしょうか。
まずは最近、部下へ質問した場面を一つ思い出してみてください。
その質問は、部下の考えを理解するためのものだったでしょうか。
それとも、自分の答えへ近づけるためのものだったでしょうか。
自分を責める必要はありません。
気づくことができれば、次の質問や関わり方を考えることができます。
まとめ
経験があるからこそ、マネージャーには答えが早く見えます。
それは、問題を早く解決し、チームの成果を守るための大切な力です。
一方で、その答えを部下へ伝えることが、いつも部下の成長につながるとは限りません。
質問をしていても、自分の正解へ導こうとしていれば、部下は自分で考えるより、上司が求める答えを探すようになります。
マネージャーの成長とは、経験を手放すことではありません。
答えを伝えるためだけでなく、部下の考えを理解し、必要な支援を判断するために経験を使うことです。
皆さんは部下へ質問するとき、相手の考えを聞こうとしているでしょうか。
それとも、自分の答えを確認しようとしているでしょうか。
次に部下へ質問するときには、自分と違う答えが返ってきても、すぐに修正せず、
「なぜ、そのように考えたのですか?」
と、もう一つ聞いてみてはいかがでしょうか。
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