職業訓練は、現代社会において、就職や再就職を目指す多くの方々にとって非常に重要なスキル習得の機会となっています。
特に、ハローワークを通じて提供される「ハロートレーニング」は、求職者や在職者、学卒者、そして障害のある方々など、多様なニーズに対応した幅広いプログラムを提供しています。
本記事では、これらの訓練プログラムの詳細を、具体的な例とともにご紹介します。
多様性に対応した訓練プログラム
『職業訓練』と言っても、いくつかの種類があります。対象者が決められています。
いくつかの訓練を紹介します。
1. 公共職業訓練(離職者訓練)
公共職業訓練は、主に雇用保険を受給している求職者の方々を対象とした無料の訓練プログラムです。
このプログラムは、再就職に必要な職業スキルや知識を習得するためのもので、様々な職業分野に対応したコースが用意されています。
訓練プログラム例
テクニカルオペレーション科
製造業における機械操作や設備のメンテナンスに関する技術を学びます。
電気設備技術科
ビルや工場の電気設備の設計・施工・保守に必要なスキルを習得します。
住環境計画科
住宅や商業施設の建築や改装に関する基本的な知識と技術を学びます。
自動車整備科
自動車の点検・整備・修理に関する高度な技術を習得します。
介護サービス科
高齢者や障害者の介護に必要な知識と実務スキルを学び、介護福祉士を目指します。
これらの訓練は、各都道府県で実施されており、実際の現場で活かせる実践的なスキルを身につけることができます。
また、コース終了後の就職率も高く、多くの受講者が再就職に成功しています。
2. 求職者支援訓練(求職者支援制度)
求職者支援訓練は、主に雇用保険を受給できない求職者(受給が終了した方も含む)を対象にした無料の職業訓練です。
この制度は、雇用保険の対象外となる求職者にも、就職に必要なスキルを提供することを目的としています。
訓練プログラム例
情報処理科
パソコンスキルビジネス基礎科
介護・医療・福祉
すぐに活かせる 介護職員初任者研修
デジタル系IT
Webデザインも学べる Webプログラマー養成
理容・美容関連分野
エステシャン・アロマセラピスト養成
これらの訓練は、求職者が新たなキャリアを築くための基盤となるスキルを提供し、再就職の成功をサポートします。
コース終了後も、ハローワークのサポートを受けながら就職活動を進めることができます。
3. ハロートレーニング(在職者訓練)
在職者訓練は、主に中小企業に勤める方々を対象とした、短期間で専門知識や技能を向上させるための訓練です。
これらのプログラムは、生産性の向上や業務改善を目的としており、業務に直結する実践的なスキルを提供します。
訓練プログラム例
生産性向上支援訓練
生産現場での業務改善や新製品開発に必要な知識を学び、企業の競争力を高めます。
電気工事科
電気設備の施工や保守管理に必要なスキルを学び、資格取得を目指します。
溶接科
溶接技術を基礎から応用まで学び、精密溶接や特殊溶接に対応できるスキルを身につけます。
機械加工科
金属加工や機械設計の基礎を学び、機械製造業で必要な技術を習得します。
情報ビジネス科
パソコン操作やオフィスソフトの活用、ビジネスマナーなど、業務に必要な基礎知識を学びます。
これらの訓練は、業務の効率化や新たな業務に挑戦するためのスキルアップを目指す方に最適です。
訓練を受けることで、現在の仕事での生産性を高めるとともに、キャリアの幅を広げることが可能になります。
4. 学卒者訓練
学卒者訓練は、中学や高校を卒業したばかりの方々を対象に、地域産業に必要な職業スキルを習得するための訓練です。
このプログラムは、地域の実情に合わせて、労働市場で即戦力となるための多様な技能・知識を提供します。
訓練プログラム例
OA事務科
オフィス業務に必要なパソコンスキル、文書作成、データ管理、ビジネスマナーを学びます。
機械加工科
製造業で使用される機械加工技術を学び、工作機械の操作や製品の製造技術を習得します。
自動車整備科
自動車のメカニズムを理解し、点検・整備・修理の実務スキルを習得します。
木造建築科
伝統的な木造建築技術から最新の建築技術までを学び、施工管理や設計の基礎を習得します。
電子情報技術科
電子機器の設計・開発・保守に必要な技術を学び、情報通信業界でのキャリアを目指します。
これらの訓練は、若年層が実践的なスキルを身につけるための絶好の機会であり、地域社会のニーズに合った人材を育成することを目指しています。
また、経済的な理由で訓練を受けることが難しい方には、融資制度を活用して訓練を受けることが可能です。
5. 障害者訓練
障害のある方を対象とした職業訓練は、個々の状況に配慮したきめ細やかなサポートを提供しています。
このプログラムは、障害のある方が社会で活躍するために必要なスキルを習得できるよう、特別なカリキュラムが組まれています。
訓練プログラム例
ビジネス情報系
パソコン操作やオフィス業務に必要なスキルを学び、事務職での就職を目指します。
自動制御
自動化された生産ラインの操作や保守に必要な技術を学び、工場勤務でのスキルを習得します。
電子機器組立
電子機器の組立や修理に必要な技術を学び、製造業でのキャリアを目指します。
喫茶サービス部門
喫茶店での接客や調理の基本を学び、サービス業で活躍できるスキルを習得します。
また、障害者技能競技大会(アビリンピック)を通じて、職業スキルを社会にアピールする場も提供されています。
この訓練は、障害のある方々が自信を持って社会で活躍できるよう、実践的なスキルを身につけるサポートを行っています。
職業訓練のまとめ
ハロートレーニングの職業訓練は、離職者、求職者、在職者、学卒者、そして障害のある方々と、多様な対象者に対応した幅広いプログラムを提供しています。
これらの訓練は、個々のニーズに合わせて設計されており、それぞれが新たなキャリアやスキルアップに向けての道を切り開くための支援を提供しています。
職業訓練を通じて、新しい一歩を踏み出し、自分自身の可能性を広げていきましょう。
受講を希望される方は、ぜひお近くのハローワークにご相談ください。
資格取得前から準備しておくべきこと
「資格を取得したい」との希望は、よく聞きます。
わたし自身も資格を取得したことで、50歳以降の選択肢が広がりました。私は必要性を感じて勉強して資格を取得しました。「今の仕事で活かせる!」がスタートでした。
就職のサポートをしている時に、「資格を取りたい」との希望を聞きますが、具体的に決まっていない人も多いです。関連する内容を記載します。
意思のない資格取得希望者
先ほども少し触れましたが、たまに「資格を取りたい」との希望を話される方はいます。具体的に何の資格を取得したいのかを聞くと「それが…」や「医療事務が良いと聞いています。」など話しをされます。
なぜ、医療事務なのかを質問すると知人に勧められたなどの理由を上げられます。
そのような場合には、自分の意思が感じられず、言われたことをそのまま実行する方を見ると不安になります。カリキュラムについて行けるのか?継続する意思があるのか?
そのような方には、他に興味が持てるものがないかなどを質問して、少し冷静になってもらうことを考えることがあります。
最初に紹介した訓練は、補助金などが出るメリットもありますが、決まり事もあります。出席率が低いと補助金がすぐに受けられなくなります。
そのため、自分が好きなことや興味があることが必要な条件になると思います。苦手なことや嫌いなことを続けられるかを考えると分かると思います。
資格取得による得られるもの
40歳代後半から50歳代で積極的な方の中に「IT関連の資格を検討している」という方もおられます。方向性としては、良いのだろうと考えますがこのような方も不安を感じます。
先ほども触れた、人から言われて影響を受けている方に近いのではないかとの不安です。
カリキュラムについて行けるか?休まずに勉強できるか?などです。
● 資格取得で得たいものは何か?
資格を取ることで、どのような就職先があるか?給与はいくらくらいか?は情報収集すると思います。
資格を取ることで、収入や仕事の幅を広げることを目的に取り組んでいる方が多いのではないでしょうか。転職を検討する場合でも、今よりも勤務条件が良くなることや収入が増えるなど達成したものがあると思います。
当たり前のことを書いていますが、実際に仕事の中で話しをしていると具体的に考えられていないケースが多いです。この部分は冷静に考える時間を作ることをお勧めします。
決めるのは自分
職業訓練の案内書などを見ていると、「就職率80%」など記載されていることもあります。
訓練校でも就職案内はしてくれる可能性はありますが、自分次第です。
資格を取得して、再就職した時に自分よりも年下の先輩社員から指導を受けることになります。そのような状況がある可能性もあります。
資格を取得することで、選択肢は間違いなく広がる可能性があります。ただ、ハードルがないわけではないことは理解しておく必要があります。
● 出席率を維持しつつ、スキルや知識を習得する必要がある
● 就職活動を実施して、面接試験にクリアする必要がある
● 資格を活かして独立の可能性もあるが、独立のための知識やスキルが必要になる
● 再就職した場合、業界に関する知識やスキルと共に社内ルールを理解する
● 人間関係
自分が進む環境で、ハードルの数や高さは変わると思います。
まとめ
ハロートレーニングは、幅広い対象者に対応した職業訓練プログラムであり、求職者、離職者、在職者、学卒者、障害者など、それぞれのニーズに合わせたスキルを提供します。
これにより、就職や再就職を目指す方々が、新たなキャリアを築くための基盤を得ることができます。資格取得に際しては、自身の意思と目標を明確にし、冷静に判断することが成功への鍵となります。