先日、「慣れ」についてお話しさせていただきましたが、今日は年度末に向けた別の重要な視点、「チームの納得感を伴う着地点の見極め」についてお話ししたいと思います。
数字の真の意味を考える
私は製薬会社で30年以上営業職として働き、そのうち14年間をマネージャーとして過ごしました。
その中で特に印象に残っているのは、あるチームで経験した年度末の状況です。
現状の進捗では97%でのゴールが見込まれる中、チームには98.5%以上の数字を求められていました。
この1.5%の差は、単なる数字以上の意味を持っていました。
それは、組織全体の目標達成における重要な役割でした。
状況に応じたメッセージの重要性
ベテランマネージャーの経験から、同じ状況でも、その時々の「空模様」によって、伝えるべきメッセージは大きく変わることに気づきました。
- 「晴れ」の状況(好調な推移)
- 現在の進捗:97.5%以上(当初見込みを上回る可能性がある)
- 市場環境:追い風
- チームの状態:モチベーション高い
このような状況では、 「あと一歩の98.5%、組織全体の目標達成に大きく貢献できる機会です。このチームなら必ずできる」 という期待と信頼を込めたメッセージが効果的でした。
- 「くもり」の状況(やや不安定)
- 現在の進捗:96-97%(当初見込みを下回る可能性がある)
- 市場環境:不透明
- チームの状態:若干の疲れ
ここでは、 「97%という数字は、決して低い達成率ではありません。ただ、チーム全体の目標に向けて、もう少し何かできることはないでしょうか。一緒に考えていきましょう」 という共に考えるスタンスが重要でした。
- 「雨」の状況(厳しい状況)
- 現在の進捗:95%以下(当初見込みを完全に下回る)
- 市場環境:向かい風
- チームの状態:疲弊気味
このような時は、 「現在の市場環境を考えると、95%という数字にも重みがあります。ただ、最後まで諦めずに、できることに取り組んでいきましょう。私たちにできる最善は何か、一緒に考えていきましょう」 というメッセージで、現実を認識しながらも前を向く姿勢を示すことが大切でした。
納得感を生み出すための具体的アプローチ
- 情報の透明な共有
- 全体目標における自チームの役割の明確化
- 現在の状況と見通しの共有
- 他チームの状況も含めた全体像の提示
- 対話を通じた合意形成
- 個々のメンバーとの1on1での率直な対話
- チーム会議での オープンな議論
- 実現可能な施策の共同検討
- 現実的な目標設定
- 段階的な目標の設定
- 達成可能な短期目標の提示
- 状況に応じた柔軟な修正
経験から学んだこと
特に印象的だったのは、年度末に向けて98.5%を目指していた時の経験です。
当初、この目標に対してチーム内で「現実的ではない」という声がありました。
しかし、以下のようなアプローチを取ることで、チームの納得感を徐々に高めることができました:
- まず97%の達成に向けた具体的な行動計画を立てる
- その上で、可能性のある上積み要素を全員で検討
- 些細な可能性も含めて、全ての選択肢を検討
- 実現可能性の高い施策から優先的に着手
結果として97.8%での着地となりましたが、チームメンバー全員が「最善を尽くした」という実感を持つことができました。
次年度に向けた布石
この経験で最も重要だと感じたのは、年度末の取り組み方が次年度のチーム運営に大きな影響を与えるということです。
数字の追求だけでなく、チームの納得感を伴う取り組みができたかどうかが、次年度のスタートダッシュを大きく左右するのです。
まとめ
年度末の2ヶ月、求められる数字と現実的な着地点の間で、マネージャーには繊細なバランス感覚が必要とされます。
しかし、それ以上に重要なのは、チームメンバーとの対話を通じて納得感を醸成し、全員で最善を尽くす環境を作ることではないでしょうか。
皆様のチームが、納得感のある年度末を迎えられることを願っています。
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